2013年12月12日木曜日

皆勤の徒



異形の天才、降臨。
 

帯にもネットの商品紹介にもそう書かれているこの不思議なSF作品は今年の夏に出たばかりの新刊だ。

twitterでフォローしているSFクラスタの方達も絶賛の嵐だった。しかるに自分も読まなければと思ってはいたが、何分1800円というのは貧乏学生には中々手を出しにくい物もあって、興味はそそられてはいたが買おうも買えずに日がすぎていた。



まぁ結局買って読んでみた訳だが、おかしい・・・一ページが終わらない。

たかが60数ページ。電車の中で読み終わると思い楽しみにして本を開いたが、コレは家に帰ってじっくり読む必要があると感じ、本を閉じた。


あれ?自分ってこんなに読解力無かったっけ?
造語?なのか?何を書いているのかよく理解できないまま、現状の自分の想像力でその見慣れない文字の陳列が意味する事を補完せざるを得なかった。

救いとして挿絵が書かれていて、その挿絵である程度のイメージを作り上げるのだ。

挿絵不要派だが、今回は挿絵に助けれた。(厳密に言えば助けきれていないが)



作者の想像と自分の想像が少しずれたら、全く別の物になってしまう。読んで、理解出来ない丁度良い所で挿絵が挟まれる、「あ、なるほどこういうことか」その挿絵でズレ始めたイメージを修正する。

丁度中盤から上辺りで表紙に描かれている話になる。そこで、あらかたの世界観の全貌が理解できる。

と思いきや、クライマックスでまた何かよく分からない事が始まった。


皆勤の徒を読み終えた頭の中は疑問とモヤモヤに満ちた。

俺は読解力が無いようだ。


救いの手をネットに求めた。ネットの感想を見ると、自身もその感想に影響されてしまうので、簡単な解説くらいしか読みたくは無いのだが、そんな悠長な事は言ってられない。


すると良い感じのちょいコメントに「とりあえず最後の大森さんの解説を読みなさい」と書かれていたので、そういえばそうだったと解説にページをめくる。

解説を読んで安心した。どうやらこの本は本当に難解で「独創的すぎて、理解してもらえないかも・・・誰が読んでも面白いとは言えない」と書かれていた。

よかった、俺だけじゃないのか、背伸びして理解した気になれなかったのでこの解説は非常に意味がある。

解説で笑ったのが【表題作を途中まで読んで挫折しそうになり、なんらかの助けを求めてこの解説のページにたどり着いた人には・・・】と書かれていて、まんまと自分の事であるが、大森さん、良いのかそれで(笑)

とりあえず言われた通りに本書の中の短編達を先に読み進める事にした。
なるほど、少し癖が強いが確かにまごう事なきSFである。最初の皆勤の徒から進むに連れて、どんどん話が読み安くなっていく、この本は順番が逆だ(笑)

大森さんが解説で言いたい事が徐々に把握できるようになっていった。
この四作品のチョイスはなかなか絶妙で、新人だからこその酉島ワールドをただのSF作家にとどまらせようとせずに、あえて難解な皆勤の徒を前に持ってくる事で、この作者の天才性を惜しみなく表現したいんだなと言うのが伝わったように感じる。


だからと言ってコレは解説読まないとわからんよ、という事で何だか納得しきれる訳ではないが、確かにそう言われれば何回も読んでみようと思ってしまうから不思議だ。

難解ほど何回も読みたくなる。

失敬。


これkindleだけで読んだ人大丈夫なのか不安になるが、しかし、大森さん達に天才と称され、SF界の金字塔と呼ばれるのならば、この酉島伝法さんの書く世界を何が何でも理解しなればならないという使命感にとらわれる。

難解だから仕方ないといってもやはり自分自身が読むことに対して力不足であるということは変わりなく、今回はソレを非常に痛感した。


とりあえずこの作品と作者を理解しなければならないのだが、コレを理解するために何が足りないのかがさっぱり分からない、多分、そこが分かれば、ビールの味がわかる頃合の若者程度にはなれるだろう。

何が足りないのだ。それがわかるまではこの本を大切に保管しておかなければ行けないようだ。


そして何となく自分も解説っぽく書いてしまう。えらくマジメに書いてしまったので最後に俗っぽく

ぷよーん





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